「不自由展」中止余波拡大、抗議声明に出展取り下げ
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が中止となった問題は、映画「誰がために憲法はある」の井上淳一監督らが5日、抗議声明を発表するなど波紋が広がっている。
愛知県によると、この企画展とは別の展示に参加している韓国人作家2人が同日までに、出展を取り下げる意向を芸術祭の実行委員会に伝えた。
抗議声明は、展示中止を求めるなどした河村たかし名古屋市長や菅義偉官房長官の発言について「憲法21条2項で禁じられている『検閲』につながりかねない、極めて不当なもの」と指摘。
さらに、暴力を示しながら抗議すれば、自らの意に反する表現の場を失わせられるような社会は「断じて民主主義ではない」と訴えた。
一方、県によると、韓国人作家2人はいずれもソウルを拠点に活動するイム・ミヌク氏とパク・チャンキョン氏。
取り下げの詳しい理由について、県は「確認中」としている。今後、対応を協議するという。
芸術祭のホームページによると、イム氏は大型のインスタレーション(空間的芸術)などを手掛け、今回の作品名は「ニュースの終焉(しゅうえん)」。
パク氏は銃を携えた少年がハーモニカを吹いている写真などで構成するスライドショー「チャイルド・ソルジャー」を出品していた。
「表現の不自由展・その後」は元従軍慰安婦を象徴した「平和の少女像」などを展示。
実行委は3日、「テロや脅迫ともとれる抗議があり、安全な運営が危ぶまれる状況」として開催中止を決めた。
共産党名古屋市議団も5日、河村市長に抗議するとともに、企画展の再開を申し入れる文書を提出した。