閖上のシンボル解体…水産加工会社の旧工場
東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた宮城県名取市閖上地区で、看板を掲げたまま残っていた水産加工会社「佐々直」の旧工場の解体作業が9日始まった。
地元の名産「笹かまぼこ」製造販売の老舗で、旧工場は震災前の地域の姿を伝えるシンボルとなっていた。
佐々直は1916年創業で、旧工場は鉄筋コンクリート造り2階建て。1階天井付近まで浸水したが、屋上の看板などは形をとどめた。
震災後、一帯が更地になる中で、旧工場は震災遺構として見学者も相次いでいた。
同市が保存する計画を示したが、議会などから反対を受けて撤回。跡地は市の震災メモリアル公園の一部として整備されることになった。
解体作業は午前9時頃に開始され、大きな刃を付けた重機が外階段などを取り壊した。
同社は震災後、別の工場で操業を再開しており、旧工場2階で津波から逃れた佐々木直哉社長(72)は「建物がなくなっても、ここで災害があったことを伝えていきたい」と話した。