小島一朗被告（共同）

東海道新幹線で昨年6月、乗客の男女3人が殺傷された事件で、殺人や殺人未遂の罪に問われた無職小島一朗被告（23）の裁判員裁判の初公判が28日、横浜地裁小田原支部（佐脇有紀裁判長）で開かれた。
小島被告は「間違いありません。殺すつもりでやりました」と言い、起訴内容を認めた。
検察側は「刑務所に入るために新幹線で無差別殺人をしようと計画した」と主張。
冒頭陳述からは、被告が家庭環境で孤立していった背景が浮かび上がってきた。

眼鏡をかけた小島被告は髪を短く刈り込み、上下グレーのスエット姿。「失礼します」と一礼して入廷した。
罪状認否では、重傷を負わせた女性2人について「残念ながら殺し損ないました」。
殺害した男性については「見事に殺しきりました」とよく通る声で話した。

冒頭陳述によると、被告は両親と折り合いが悪く、祖母と暮らすようになり、17年9月に祖母と養子縁組した。しかし、祖母宅で伯父との口論が絶えず家出を繰り返した。
17年12月に「旅に出たい」と愛知県内の祖母宅を出た後、長野県内の公園などで寝泊まりしていた。

検察側は「被告がいつしか社会で1人で生きていくのは難しいと思うようになり、一生刑務所に入るような重大な犯罪をしようと決意した」と指摘。
祖母は1週間に1度は被告の携帯電話に連絡していたが、18年3月に電話した際「心配しているのに帰ってきてくれないのは、長い夢を見ているのかね。いっちゃん（＝小島被告）がいない存在だと思えばいいのかね」と話したことから、被告は養子縁組を解消されると誤解し、犯行を決意したと主張した。弁護側は「事実関係に争いはない」とした。

検察官が押収したナイフを示し「要りませんね」とたずねると、被告は「もし有期刑になって出所してまた人を殺す羽目になったら、新しい物を買うので要りません」と話した。
また、検察官が裁判員に「ふさわしい刑罰を決めてほしい」と発言すると、被告は深くうなずいた。

重傷を負った女性2人の調書が朗読され「一生、新幹線に乗ることはできない」との言葉もあった。
被告については「2度と外に出してほしくない。厳罰に処してほしい」と訴えた。

起訴状によると、18年6月9日午後9時45分ごろ、新横浜−小田原間を走行中の東京発新大阪行きのぞみ265号（16両編成）の12号車で、20代の女性2人をなたで襲って重傷を負わせ、止めに入った兵庫県尼崎市の会社員梅田耕太郎さん（当時38）の首や太ももをなたとナイフで切り付け殺害したとしている。

4カ月間の鑑定留置を経て、検察側は刑事責任能力に影響ないと判断し、昨年11月に起訴した。