昭恵夫人の名前あった 14文書改ざん、複数政治家の名前も
決裁文書に記してあったはずの「安倍晋三首相」と「昭恵夫人」の名前は丸ごと消され、政治とのつながりがある部分は全て削除されていた。
財務省の決裁文書改ざんを受け、首相は記者団に「行政の長として責任を痛感している」と陳謝。一呼吸置いて、「なぜこんなことが起きたのか」と述べた。
一貫して森友問題への関与を否定し続けてきただけに、その表情は曇りがちだった。
財務省が発表した78ページにわたる報告書によると、昨年2月下旬から4月にかけて15年2月〜16年6月の5つの決裁文書が書き換えられ、それを反映する形で14年6月〜16年6月の9つの文書も書き換えられた。
首相は全容解明を進める考えを表明したが、皮肉にも鍵を握るのが昭恵夫人だ。森友学園が計画した小学校の名誉校長に一時就任。
財務省の報告書によると、改ざん前の文書には、学園を訪問した際、教育方針に感涙したとするインターネット記事や、14年4月に学園側との打ち合わせの際に「いい土地ですから前に進めてください、とのお言葉を頂いた」という森友側の発言があった。
全部で昭恵夫人の名前は5カ所あったが全てなくなっていた。夫人による学園への関与を希釈させたい意図がにじむ。
「『学校法人 森友学園』の概要等」という決裁文書の原本には、首相の名前も記してあった。
森友学園の籠池泰典前理事長を「(保守系団体の)日本会議大阪に関与」と紹介し、関連の日本会議国会議員懇談会を「特別顧問として麻生氏、副会長に安倍総理らが就任」と説明した部分も削除された。
昭恵夫人はこれまで「真実を知りたい」と無関係を主張してきた。
森友問題を担当していた財務省近畿理財局職員の自殺が報じられた9日も、自身のフェイスブックで出演イベントの鏡抜きの写真をアップするなど普段と変わった様子はなかった。与党側は拒否する姿勢を見せているが、野党は昭恵夫人の証人喚問を求める考え。
血税が注がれた国会の空転が続いており、財務省が公文書を改ざんしてまで名前を消した人物をもはや「私人」というには無理がある。関与したか、していないのか。自らの口で説明しなければ国民の理解は得られない。