爆発危険溶剤、クリーニング店「認識不足」多数
火災時に爆発的に燃える危険があるのに、石油系溶剤を住宅街や商店街で違法に使っているクリーニング店の是正が進んでいない。8年前に建築基準法違反で行政指導を受けた全国の店・工場のうち、その後違法状態を解消したのは2割にとどまる。違反店舗から出火する事態も起きており、国土交通省は改善策の検討を始めた。
◆違法の認識なし
石油系を含む引火性溶剤は火災時に大きな危険を及ぼすため、建築基準法で原則として工業系地域以外での使用が禁じられている。住宅・商業系地域で使うには、自治体から特例許可を受けるしかない。
2009年、大手クリーニング業者が住宅・商業系地域で運営していた店で、相次ぎ同法違反が発覚。国交省による10年の調査では、全国の店・工場の半数を超える1万5211か所が違反していた。同省は自治体を通じて是正指導し、その後も追跡調査をしてきたが、昨年末までに改善が確認できたのは2割の3016か所だけだった。
総務省消防庁によると、クリーニング店・工場では年間30件以上の火災が発生。石油系溶剤に引火する恐れがあるため周辺住民が避難した例もある。
横浜市では今年1月、住宅や店舗が密集する地域にあるクリーニング店から出火。他の建物への延焼はなかったものの、店は全焼し、従業員など8人が病院に搬送された。
市によると、この店も石油系溶剤を使用しており、市は12年〜15年に計4回、是正を求める通知書を郵送していたという。しかし店主は読売新聞の取材に対し、「引火しないよう十分気をつけていた。通知書は読んでおらず、違法性の認識はなかった」と主張した。
国交省はこうした「認識不足」が多数あるとみて、全国の自治体に対し、積極的に周知を図るよう促すことを検討している。