「罰金」ランキング表 大手損保出向社員ら作成 ビッグモーター社長は「罰ゲーム好き」
自動車保険の販売実績をめぐり、ビッグモーター社の店長間で行われていた事実上の「罰金制度」は、収益性の高い保険手数料を獲得するために兼重宏行社長の強いリーダーシップで行われていた可能性が高まった。
ランキング表を作成していた同社保険部の幹部は、大手損害保険会社の出向社員だったことも判明。
外部からの出向社員も不適切な可能性のある仕組みを見過ごしていた形だ。
「社長は、社員と飲食したときに、じゃんけんで代金を出す人を決めるくらいの罰ゲーム好きだ」
ある元店長は兼重社長について、こう明かす。
社内文書によると、昨年12月の報道後に兼重社長は社内の会議で「競争原理を働かせるためにやっていたが、従業員に正しく伝わっていなかった」と発言。
「金額面とやり方を変更して実施していく」として継続する意向を示していたという。
背景には収益性の高い保険料収入をめぐる激しい競争がある。
業界関係者によると、中古車業界は過当競争状態だが、車自体の値上げは難しく、保険代理業務で稼ぐ手数料が収益力向上には重要だという。
一方、賞金や罰金の金額を示したランキング表を毎月作成、配布していた同社保険部の部長を務めているのは大手損保からの元出向社員で、次長は現役の出向社員だった。
金融庁の指針では保険会社は代理店などに対し、保険販売に関しての「適切な教育・管理・指導」が求められる。
同庁担当者は「結果的に販売員が不適切な販売行為に及んだ場合には、保険会社の責任が生じることがある」と指摘する。
ただ、ビッグモーター社は複数の大手損保から代理店業務を請け負っており、いずれの損保会社も保険販売について責任ある立場に置かれる。
ある損保関係者は「損保側にとって代理店は重要な契約相手でもあるので、社内事情に口出ししにくいのが実情。
ただ、労務管理に厳しい視線が注がれるご時世ゆえ、どこかで襟を正すべきだったのではないか」と話す。
ビッグモーター社に社員を出向させていた大手損保は「(他社のことは)コメントをする立場にないため、回答を差し控えます」とした。