南海トラフ地震の「前兆」とはいえない…豊後水道のM6・6で気象庁
静岡県の駿河湾から九州東沖まで延びる南海トラフでは、30年以内にマグニチュード(M)8〜9級の巨大地震が70〜80%の確率で発生し、死者・行方不明者は最大約32万人に上るとも予想されている。
17日午後11時14分頃に発生した豊後水道を震源とするM6・6の地震は、この巨大地震の想定震源域の一部で発生したが、気象庁は巨大地震の「前兆」とはいえないとみる。
その理由の一つは、想定される巨大地震と今回の地震とでは、発生メカニズムが異なるためだ。海のプレートが陸側を引きずり込みながら毎年数センチずつ沈み込む南海トラフでは、およそ100〜150年間隔でプレート境界が大きくずれ動き、巨大地震が発生してきた。次の巨大地震も同様に発生するとみられている。
一方で、今回の震源は深さ39キロと、巨大地震が起きるプレート境界(深さ約30キロ)よりも深い地下にあり、沈み込む海のプレート内部で発生した。プレートの動きに伴って東西に引っ張る力が働き、岩盤が割れたという。
また、巨大地震の引き金となるには規模が比較的小さかったことも挙げられる。震源周辺ではこれまでもM6・6の地震が1968年8月、M5・7の地震が2015年7月に起きている。
東京工業大の中島淳一教授(地震学)は「今回の地震は、南海トラフ地震を引き起こすプレート境界のずれを誘発するほどの規模ではないだろう」とみている。