時価総額1兆円超える場面も 東京メトロが上場 ソフトバンク以来約6年ぶりの大型上場案件
首都圏で地下鉄を運営する東京メトロが東京証券取引所の最上位プライム市場に23日上場し、初の取引が始まった。初値は1株1630円で売り出し価格の1200円を35・8%上回った。初値ベースの時価総額は9470億円。午前は株価が一時1768円まで上昇し、時価総額が1兆円を超える場面もあった。2018年のソフトバンク以来約6年ぶりの大型上場案件だ。東京メトロは高水準の利益を誇る鉄道を軸に、不動産など事業の多角化を進める。
上場に伴い、国が53・42%、東京都が46・58%の株式の保有割合はそれぞれ半減。国の株式売却分は1800億円余りで、東日本大震災の復興財源を賄うため発行した復興債の償還費用に充てるよう定められている。
この日は取引開始から東京メトロ株に買い注文が集中し、午前10時過ぎまで初値が付かない状態が続いた。午前の終値は1722円で、この価格に基づく時価総額も1兆円を超えた。SBI証券の鈴木英之投資情報部長は「収益に安定性があり、新たな投資対象として個人投資家からの注目が高い」と話した。
国と東京都は当面、残る株式の保有を続ける考え。東京メトロが計画する2路線での延伸を支援する。完全民営化が今後の検討課題となる。
東京メトロの24年3月期の営業利益は763億円で、売上高に占める割合(営業利益率)は19・6%と、首都圏の他の私鉄を大きく上回る水準だ。強固な収益基盤を持つ一方、経営に対する国と東京都の関与が残る中、沿線開発などを通じてどう企業価値を高めていくかが問われる。