斎藤元彦氏、再選 兵庫県知事選 パワハラ疑惑の前知事が大逆転! 立花孝志氏も後押し
パワハラ疑惑などを巡り県議会で不信任決議を受けた斎藤元彦前兵庫県知事(47)の失職に伴う知事選が17日、投開票され、無所属の斎藤氏が、元尼崎市長稲村和美氏(52)、日本維新の会を離党した前参院議員清水貴之氏(50)ら無所属6新人を破り再選を果たした。
無所属を含め86人の全議員から不信任を突き付けられた斎藤氏。議会の調査特別委員会(百条委員会)で改めて証人尋問が行われる見通しで、混乱した県政を立て直せるか不透明だ。
過去最多の7人が出馬した乱立選挙を制した斎藤氏。神戸市内の商店街に構えた選挙事務所に姿を見せると、割れんばかりの拍手の中、涙を浮かべ「多くの皆さまにご支援いただいた。心から心から御礼申し上げたい」とあいさつ。「改革をして県政を前に進めてほしいという期待を頂いた。歩みを止めない」と述べた。
和菓子店と鮮魚店に挟まれ間口3メートルほどの事務所前の路上は、数え切れないほどの人たちで埋め尽くされた。「斎藤コール」が鳴りやまず、号泣する支援者も見られた。
不信任決議で失職した後の出直し選で当選したのは、「脱ダム宣言」で長野県議会と対立した2002年の田中康夫氏以来2人目。
疑惑を否定し続け、県民の信を問うと出馬。最大会派自民党の一部や公明党、立憲民主党の県組織が支援した稲村氏がリードする展開で猛追していった。
「一人からのスタート」と振り返った選挙戦。街頭演説で疑惑告発文書問題に自ら触れ、繰り返し頭を下げる一方、「真実は何か判断してほしい」と呼びかけ。
「斎藤コール」が湧き起こるなど熱気は高まっていき、正当性を強調する流れで亡くなった告発者を非難する発言も目立った。
風を起こし、逆転劇を呼び込んだのは、X(旧ツイッター)などのSNSを駆使した「石丸作戦」。
7月の東京都知事選で石丸伸二前広島県安芸高田市長が小池百合子知事に次ぐ165万票余りを獲得した「石丸現象」の再現だ。
関係者によると、専門家の支援を受け、演説予定や活動の様子の動画などを頻繁に投稿したほか、思いを語るライブ配信にも取り組み、「#斎藤がんばれ」がトレンド入り。
失職直後の9月末に約7万人だったXのフォロワー数は19万人台に。大勢の聴衆が集まるようになり、動画などを自らのSNSに投稿する人も増えていった。
厳しいコメントが寄せられ「好きではなかった」というSNSの有効活用。「支援がここまで広がるとは思わなかった。プラス面を凄く感じた。県民の皆さま一人一人の勝利だ」と話した。一方、政治団体代表の立花孝志氏が斎藤氏を後押しすると出馬し情報発信に加勢した。
SNS戦略による猛追に慌てた市長会有志22人が選挙戦終盤に異例の稲村氏支持を表明したが、確実に自民支持層も取り込み、逃げ切りを阻んだ。稲村氏陣営の一人は「斎藤さんがかわいそうという同情が生まれ、有権者をのみ込んでいった」と分析した。
県議会との向き合いについて「政策をどうするのかが一番大事。謙虚に丁寧にやっていきたい」と話した斎藤氏。しかし、証人尋問が行われる見通しで、綱渡りの県政運営になるのは必至だ。