安倍晋三元首相銃撃事件、山上被告側は精神状態争わず「完全責任能力ある」精神鑑定の結果明かす
安倍晋三元首相銃撃事件で殺人罪などで起訴された山上徹也被告(43)に関し、検察側が請求した精神鑑定で「完全責任能力」があるとする結果が出ていたことが19日、関係者への取材でわかった。
弁護側が当時の精神状態を争わず、再鑑定の請求を事実上見送ったことも判明。公判開始のめどは立っていないが、被告の成育環境などの情状面や手製銃の殺傷能力の程度が中心的に審理される見通しとなった。7月8日で事件は発生から2年を迎える。
刑法は、責任能力を完全に失った「心神喪失者」は罰せず、著しく能力が低下した「心神耗弱者」は刑を軽くすると定めている。
関係者によると、弁護側は被告の完全責任能力を認めた鑑定結果を踏まえ、検察側と裁判官の3者協議の場で、無罪や刑の減軽、再鑑定の必要性を積極的に主張していない。
一方で他の争点に関しては何度も協議を重ねており、再鑑定の請求を棚上げしたもようだ。公判でも無罪を主張しないとみられる。
裁判員裁判で審理される見通しで、証拠や争点を整理する公判前整理手続きは既に3回行われた。
被告は、母親が多額の献金をした世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に恨みを募らせていたとされ、逮捕後に「(教団を韓国から)招き入れたのは岸信介元首相。だから(孫の)安倍氏を殺した」などと供述した。弁護側は公判で、家庭環境に同情すべき点があったと主張するとみられる。
起訴状などによると、被告は2022年7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で、演説中の安倍氏を手製のパイプ銃で銃撃し、殺害したなどとしている。