売春対策、摘発から支援へ 路上の女性、寄り添う捜査員―東京・歌舞伎町を歩く
歓楽街近くの路上などで客を待つ「街娼(がいしょう)」。生活困窮を理由に売春を繰り返すケースは後を絶たない。摘発だけでは不十分だとして、警視庁が女性を福祉相談へとつなぐ立ち直り支援を始めてから11月で1年。東京・歌舞伎町を私服姿の捜査員と歩いた。
9月中旬の平日夜、新宿区立大久保公園周辺。女性たちがガードレールに寄り掛かったり、道端に座り込んだりしていた。「周りは安いラブホテルが多い」と捜査員。午後8時ごろ、ワンピースを着た20代の女性に声を掛けると、一緒に警視庁が借りる雑居ビルの一室へと向かった。
窓のすぐ外に歓楽街が広がる部屋では、別の女性捜査員が待機していた。「ゆっくり聞かせてね」。優しく声を掛け、女性の話に耳を傾けた。
女性が働く飲食店は新型コロナウイルスの影響で、昨年7月に閉店。切り詰めて暮らしていたが貯金も底を突いた。家賃を滞納するようになり、電車で約30分の距離にある歌舞伎町に足を運ぶようになった。客1人で稼ぎは1万5000円。女性捜査員のアドバイスを聞き、「市役所に支援を相談する」と約束し、帰宅した。
10月中旬、公園近くで客を待つ別の女性に話を聞いた。以前は風俗で働いていたといい、会社員となった今も時々、訪れるという。「暇をつぶせるしお金にもなる。1万円から1万5000円がこの辺の相場かな」とあっけらかんと話した。
同庁保安課によると、売春防止法違反容疑で摘発された女性は大半が不起訴処分となり、すぐに社会生活を再開。金銭的に苦しくなるとまた街頭に立つケースが多い。
摘発だけでは再犯防止できないと、同課は昨年11月、経済事情などを聞き、東京都や区の相談窓口を紹介したり、同行したりする活動を開始。
この1年間で60人以上を支援してきた。同課の担当者は「支援の申し出拒否や、同行の待ち合わせに来ない女性も多い」と活動の難しさを指摘しつつ、「全国的に例がない取り組み。先行事例にしたい」と意気込む。
警視庁と連携し、福祉相談に力を入れる都育成支援課の小林朝子課長代理は「摘発だけでは救えない。警察と行政、複数の機関が連携することで厚みのある支援につながる」と話している。