「面倒なこと聞かないで!」 事件相次ぐ歌舞伎町「トー横」を記者が歩いた
東京・歌舞伎町の旧新宿コマ劇場跡に2015年に開業した複合施設「新宿東宝ビル」周辺は、「トー横」と呼ばれる。
同町のビル屋上で11月末、男性が暴行され死亡した事件で、容疑者の少年の一部が一帯に出入りしていたとされ、注目が集まった。
居場所を求める中学生もいるという「夜の街」を歩いた。
◆「たいていが家出中か、友だちに会いに来ている」
4日午後9時、新宿東宝ビル西側にある「シネシティ広場」。20人ほどの少年、少女が冷え込むコンクリート上で車座で談笑していた。
黒を基調とする服を着て、濃いアイラインを入れる「地雷系」と呼ばれるファッションも目につく。年の頃は10代後半か。
時折立ち上がってじゃれ合ったり、携帯電話をかざして踊る姿を動画で撮影したり。手元にはジュース缶のほかに、酒の缶も見える。
チェック柄のコートを着た1人の少女に、どこから来たのか尋ねてみた。
「横浜とか、違う県から来ている人もいるし、東京に住んでいる人もいて、たいていが家出中か、友だちに会いに来ている」。直後、隣の地雷系の少女に耳打ちされて態度を変え、だんまりを決め込んだ。地雷系の少女は「面倒なこと、面倒くさいこと聞かないで!」ととがった視線を向けた。
少し離れて座っていた、ともに20歳だという女性2人組に話し掛けてみる。「最近のトー横、新規(の子どもが)多すぎて無理。新しいヤツ、だいたいガキだから」とにべもない。
◆「キッズ」を見守る団体も
数十メートル離れた場所には、子どもたちを見守るように、20代とみられる10人ほどが陣取っていた。
ボランティア団体「歌舞伎町卍 會まんじかい」を名乗り、約半年前から子どもたちに食事を配ったり、一緒にごみを拾ったりしているという。
「トー横」は18年ごろから、ネット上で知り合った少年らが実際に会う場として使われるようになったとされる。集まる子たちは「トー横キッズ」とも呼ばれた。
一帯では今年、市販薬を過剰摂取したとみられる未成年の男女が飛び降り自殺。路上生活者への暴行事件や少女へのわいせつ事件もあり、警視庁は警戒を強化している。
団体の総会長ハウル・カラシニコフさんによると、「荒れた」状況を知って子どもたちを守るために活動を始め、メンバーは百数十人いるという。
「僕も親がいなくてけっこう大変だった。彼らの気持ちがよく分かる。居場所のない子どもたちがここを居場所にして、誇りを持ってほしい」
午後11時すぎ、警視庁の一斉補導が入った。私服警官100人以上が子どもたちに声を掛けて年齢を確認、深夜徘徊はいかいで補導される子もいた。
警官の問い掛けに神妙な表情で受け答えする少年少女たち。「この街で救いを得ていた子どもたちが、心安らかに年の瀬を迎えてほしい」。心の中でそう願った。