不眠症の薬をいちごミルクで溶かし…「悪い大人」が暗躍、トー横で違法薬物蔓延中
「ちょっと前までは、普通に薬局で売ってる市販薬でパキ(薬が決まっている状態)ってたんですけどね。今はもっとヤバいことになってます」
トー横キッズのトモヤ(仮名・18)は、そう語る。
トー横キッズの存在がメディアに取り上げられるようになった’21年夏頃から、キッズたちの間でOD(オーバードーズ=薬物の過剰摂取)はさかんに行われていた。
ただここ最近は、子供の遊びでは済まされないような危険な行為が目立つようになってきている。
「市販の風邪薬が効かなくなってきた奴らが次に手を出し始めたのが、病院で診断を受けて出してもらう『処方薬』です。強めの咳止め薬や精神安定剤、睡眠薬といったもの。流行っているのは、『サイレース』という不眠症の薬をいちごミルクに溶かした『サイレースいちごミルク』ですね」(前出・トモヤ)
サイレースを溶かしたいちごミルクは真っ青になる。SNSにこれを飲んで口の周りを青くした画像を投稿しているキッズが溢れているのを見ると、「病みカワ」の一種とされているようだ。
「ODって、一回やるとクセになっちゃうんですよね。パキり癖っていうか。嫌なこと忘れられるし、仲間とバカやってる連帯感もある。でも薬が抜けた後がしんどくて、その苦しさを紛らわせるためにまたやっちゃう。SNSでツイートするのが楽しくて、仲間内でどれだけ薬をたくさん飲んだか自慢し合ったりすることもある」(同前)
’21年5月には、歌舞伎町のアパホテルの上層階から、10代の男女二人が飛び降り心中する事件があったが、この事件もODをした後に起きたものだったとされる。
しかし最近は、そこからさらに危険な状態になっているという。ボランティア団体「歌舞伎町卍会」の元メンバーが言う。
「卍会の総長だったハウルのような『薬物嫌い』な大人がいる時は、ODはあっっても違法薬物はそこまで出回ってなかった。でも去年の6月にハウルが逮捕されて卍会がなくなってから、キッズを狙う『悪い大人』が増え、一気に治安が悪化したんです」
それを示すような事件も起きた。
5月17日、トー横キッズに暴行を加えて車のトランクに監禁し、母親から身代金20万円を奪ったとして、暴力団員の男ら4人を逮捕したと警視庁が発表したのだ。
男らはキッズを使って大麻や覚醒剤を売らせており、その売り上げを巡ってトラブルになっていたとみられている。
「ヤクザや半グレがかなりトー横に入り込んできているのは間違いない。そいつらがキッズを使って売人をやらせてるんです。いま、歌舞伎町で違法薬物を手に入れるのは簡単ですよ。そこらへんに立っている奴に話しかければ売ってもらえることもあるし、SNSでエリアを指定して『手押し』と検索すれば簡単に売人と知り合える。『手押し』ってのは、売人と直接会って薬物を取り引きすることを示す隠語です」(同前)
トー横は「居場所のない未成年が集まる場所」として報道され続けてきた。一方で、注目を集めることで、「未成年で稼ごうとする悪質な大人たち」を呼び寄せてしまったともいえる。
もちろんOD自体も決して許される行為ではないが、そこに大麻や覚醒剤といった違法薬物が入り込んできたとなればもはや猶予はない。今回の逮捕を契機に、摘発が進むことを願うばかりだ。