アフリカの風俗店でよく日本人漁師がぼったくり被害に遭う理由【元公安警察官の証言】
日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。一昨年、『警視庁公安部外事1課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、アフリカの風俗店でトラブルになった日本人男性について聞いた。
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勝丸氏が警視庁から外務省に出向し、アフリカ大陸の日本大使館に警備担当の外交官として赴任していた時の話である。
「ある日の深夜、私の携帯に同僚の女性外交官から連絡が入りました」と語るのは、勝丸氏。
「職務上、赴任した国名は明かせませんが、この国に滞在していた日本人男性が、風俗店でぼったくられて大使館に助けを求めているというのです」
日本大使館の代表電話は24時間対応で、業務時間外は職員の携帯電話に転送される。
「応対した女性外交官に男性はいきなり『風俗店でぼったくられた。助けてくれ。こっちへ来てくれ』と言ったといいます。そこで彼女は私に連絡してきたのです。『男ってどうしようもないわね』と呆れていました」
男性がいた風俗店は、大使館から1000キロ以上も離れていた。
「そのため、現地の警察に連絡して、店に行ってもらいました。日本人男性は、遠洋漁業の漁師でした。この国には、遠洋漁業の拠点となる港があり、日本の会社も支店を置いていました。その関係で一時的にこの国に滞在していました。男性は長い間船に乗っていたので、性欲がたまっていたのかもしれません。在留邦人が風営店でトラブルに巻き込まれることは月に2回ほど起きていて、多くは漁師でした」
男性が行ったのは、日本のキャバクラのような店で、気に入った子がいれば、個室に連れて行くことができるという。
「お店はピンからキリまであります。アメリカの白人が経営している店はまず安心ですが、ロシア系マフィアや中国系マフィアの店は危険です。料金は日本円で2、3万円です。ところが、女の子の言われるままに酒や料理を注文すると、追加で5万、10万円と請求されたりします。2時間制ですが、30分延長すると、計10万円と言われたケースもあります」
結局、日本人男性はどうなったのか。
「現地の警察が店に行き、その場で本人が店主と料金交渉をしました。多少は安くなったそうです」
中には法外な料金を請求されて、暴れ出した強者もいる。
「日本人の漁師の中にはレスラーのように頑強な体の人もいます。とんでもない額を請求されて、かっとなって暴れ、店の壺を壊して逮捕されてしまいました。彼は領事官通報(海外で逮捕された時、その国の日本大使館の領事に面会を求める制度)を希望したので、私が面会に行くことになりました」
勝丸氏が現地警察の留置場に赴くと、漁師は「早くここから出してくれ」と言い出した。
「この国は犯罪が多発していて、留置場は犯罪者ですし詰め状態でした。薬でラリッている人もいれば、凶悪犯もいます。その漁師はゲイから狙われているようでした」
留置場には囚人が入りきらず、署内の廊下にあふれていた。
「留置場がいっぱいなので、毛布にくるんで、ロープで簀巻きにされたり、廊下の柱に紐でくくられた犯罪者もいました。漁師は『退職金を前借りしてでもお金は何とかする。早くここから出して欲しい』と言うので、弁護士を紹介しました」
この国は性風俗が盛んで、成人の10人に1人はエイズに感染しているという統計もある。
「そのため日本から来た男性には、女性との行為はやめて欲しいといつも注意をしていました。ですが漁師たちにはあまり聞く耳を持ってもらえず、トラブルが頻発していたというわけです」