中国、台湾抗日映画を公開 「共に戦った」アピールか
中国で12月、日本統治時代の台湾先住民による抗日闘争を描いた2011年の台湾映画「セデック・バレ」がリバイバル公開される。習近平政権は高市早苗首相の台湾有事を巡る発言に反発し、対日非難キャンペーンを国内外で展開中。中国と同様、台湾の「同胞」もかつて「日本と戦った」と国内向けに宣伝する狙いとみられる。
映画は、台湾で1930年に起きた先住民族セデック族の反日武装蜂起「霧社事件」を題材としている。歴史に翻弄(ほんろう)される民族の誇りと悲哀を描いた同作品は国際的に高く評価され、日本公開時にも話題を呼んだ。主演俳優ら先住民役のせりふは大部分がセデック語。2部作で全編約4時間半にわたる。
12年に中国で封切られた際は約2時間半の短縮版だったが、今回はノーカットとみられる。配給元は、台湾有事を巡る高市氏の発言の後、11月下旬に広報活動を本格化。予告画像には「日本軍国主義のたくらみを粉砕する」との宣伝文が新たに付けられた。
公開日は第1部が12月12日、第2部が同13日。13日は旧日本軍による南京事件から88年に当たる。反日感情が高まりやすい日に、習政権の歴史観を補強するプロパガンダとして映画を利用する形だ。
こうした事態に、台湾からとみられるSNS投稿では「せっかくの傑作が台無しだ」「台湾先住民の抗日と中国は何の関係もない」といった批判の声が上がっている。
習政権は、台湾の頼清徳政権が日本に寄り添う発信を続けていることにいら立ちを強め、「『媚日』の醜態をさらした」などと連日非難している。中国が日本産水産物の輸入を事実上停止する中、頼政権は対照的に輸入規制を撤廃。訪日旅行や日本産品の積極購入も呼び掛けている。
