真夏のエアコンで死者3割以上減少、排熱で気温上昇のデメリットを上回る…国立環境研究所など推計
真夏にエアコンの利いた部屋で過ごすことで、熱中症や暑さによる持病の悪化などで亡くなる人を3割以上減らせるとの研究成果を、国立環境研究所などのチームがまとめた。近年、猛暑による高齢者らの死亡リスクが高まる中、エアコンの適切な利用が命を守ることを改めて裏付けた。
エアコンの利用で、夏場の死者をどの程度まで具体的に減らせるかを示した研究は初めてという。
チームは、大阪、神戸、京都、大津、奈良、和歌山と堺市の計7都市で、近年の8月の気候や、ビル・住宅に設置されたエアコンの排熱状況をコンピューターで再現。過去の気象データや死者の状況、エアコン保有率などの情報を加え、暑さによる死者数を推計した。
その結果、7都市における8月の平均気温は28・2度と算出され、エアコンを全く利用しない場合、同月の死者は1900人と推計されたが、エアコンを保有する全世帯が使うと、686人減少。地球温暖化で平均気温が3度上昇したと仮定すると、エアコンを利用しない場合の死者はさらに増えて9803人に上ったが、利用すれば4628人減らせた。
また、エアコンの排熱が気温を押し上げる影響を加味した推計では、3度上昇の条件で死者は342人増えたものの、エアコンを使った方が死者数を抑える効果は大きかった。
厚生労働省によると、2022年の熱中症による死者は1477人に上る。9割近くが65歳以上という。
チームの岡和孝・同研究所気候変動影響観測研究室長は「エアコン利用の重要性を示せたが、排熱を抑える研究も必要だ」としている。成果をまとめた論文が国際科学誌に掲載された。
井原智彦・東京大准教授(環境社会システム学)の話「意義のある成果だ。エアコンによる死者数抑制の効果が、排熱のデメリットを明確に上回ることを将来予測も含めて示せたのは大きい」