コメ高騰で外国産米の民間輸入が急増、高い関税払っても「十分に採算取れる」
米不足を受け、外国産米の民間輸入が急増している。
2024年度、政府に提出された輸入申請は、1月末時点で計991トンと過去最多を更新した。高額な関税を支払っても採算が取れるためだ。大手商社「兼松」(東京)は、過去に例がない1万トンもの外国産米を年内に輸入する方針を打ち出した。
コメの輸入には、世界貿易機関(WTO)ルールに基づいて外国から一定量を義務的に買う政府輸入と、商社などが国に関税を支払って行う民間輸入の2種類がある。
政府が輸入するコメは、最大10万トンが主食用として市場に出回る。民間輸入は記録が残る19年度以降、20年度の426トンが最多で、例年200〜400トン程度だったが、24年度は昨年12月末時点で468トンと過去最多を更新。今年1月末時点でさらに倍以上になった。
兼松が1万トンの輸入を打ち出したのは2月。牛丼チェーンなど外食産業からの需要が高まっていたためだ。
流通関係者によると、米国産の中粒種「カルローズ」なら輸送費なども含めて仕入れ値は1キロ150円程度で、関税を上乗せしても1キロ500円ほど。国産の店頭価格は現在、1キロ900円前後に高騰しており、利益分を乗せても十分に採算が取れるという。
食品スーパー「オーケー」(横浜市)は今月7日からカルローズの販売を10店舗限定で始めた。価格は5キロ3335円(税込み)で、売れ行き次第で販売拡大など今後の展開を決める。
一方、政府がコメを輸入する仕組みは、ミニマムアクセス制度と呼ばれる。1993年の多角的貿易交渉「ウルグアイ・ラウンド」を受け、95年度から始まった。
現在の輸入枠77万トンのうち、主食用の一般米は10万トン以下に制限されている。近年は入札で売れ残りが常態化していたが、2024年度は国内産が不作だった17年度以来、7年ぶりに完売した。
入札では、政府が受け取る差益「マークアップ」(上限1キロ292円)を業者が提示し、金額が大きい業者が落札する。過去の一般米のマークアップの平均値を年度別で算出すると、15〜23年度は43〜87円だったが、24年度は240円。11、12月の入札では、史上初めて上限の292円に達した。
コメの流通に詳しい昭和女子大の八代尚宏・特命教授(日本経済論)の話「現在の価格高騰と輸入拡大の要因は、実質的な減反で高価格を維持してきた政策の行き過ぎにある。生産量を増やし、国内消費を超えれば、その部分は輸出に回すべきだ。日本食ブームで海外需要はあり、農村の振興策にもなる」
◆民間輸入=個人や事業者が関税を支払って海外からコメを買うこと。1999年度のコメの関税化で始まった。税額は1キロ341円と従量制で、1キロ100円のコメを輸入すれば、関税率は341%となる。