指導者殺害で大打撃を受けたヒズボラ、威信失墜防ぐため大規模攻撃に踏み切る可能性も
イスラエル軍が行ったレバノンの首都ベイルート南郊への空爆で、イスラム教シーア派組織ヒズボラ指導者ハッサン・ナスララ師(64)が殺害された。大打撃を受けたヒズボラは28日の声明で「敵に立ち向かい、(パレスチナ自治区)ガザ支援のため聖戦の継続を誓う」と戦闘継続を訴えた。戦火の拡大は避けられず、情勢は緊迫している。
ナスララ師は1960年にベイルート東部で生まれた。イスラエルと敵対するイランの支援で82年に結成されたヒズボラに創設時から加わり、92年にイスラエルの攻撃で殺害された前任を継いでトップとなった。
ヒズボラはナスララ師が率いた32年間に、世界で最も強力に武装した「非国家軍事組織」として、地域で絶大な影響力を誇る存在に成長した。レバノン国会に議席も有し、政界で厳然たる力も持っている。
イスラエルへの抵抗の象徴として崇拝されたナスララ師の死は、ヒズボラにとって最大の精神的支柱を失うことを意味する。ヒズボラだけでなく、後ろ盾のイランや親イラン勢力「抵抗の枢軸」にとり大きな損失となるのは明らかだ。
ヒズボラは、イスラエルとの全面紛争による壊滅的な被害を避けるため、抑制的な攻撃を続けてきたが、イスラエル全域を射程に収めるものを含めて12万〜20万発のミサイルとロケット弾を保有しているとされる。威信の失墜を防ぐため、大規模な攻撃に踏み切る可能性も指摘される。
全面紛争になれば、「抵抗の枢軸」を構成するイラクやシリアの武装組織、イエメンの反政府勢力フーシがヒズボラ支援のため、レバノンに戦闘員を送って参戦するともいわれ、中東全域に火種が広がる。
イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は、28日の声明で、すべてのイスラム教徒に対し、反イスラエルで結集するよう呼びかけた。