晴れの日、無情の雪 寺本さん家族7人死亡
●穴水生き埋め 三男は新成人、父悲痛
能登半島地震による土砂崩れで多数の住民が取り残された穴水町由比ケ丘地区の民家で7日、新たに7人の遺体が見つかった。
寺本直之さん(52)は妻と子ども4人の家族全員を失い、無情の雪の中「なんで、こんなことにならんといけないんですか」と涙が止まらなかった。
この日、金沢で「二十歳のつどい」に臨むはずだった三男も死亡が確認され、その式の会場では同級生が晴れの日の訃報に接し、悲しみに暮れた。
寺本さんの家族は地震があった1日、由比ケ丘にある妻弘美さん(53)の実家にいた。
弘美さんとその両親の上野賀弘さん(79)、春美さん(76)のほか、寺本さんの長男琉聖さん(24)、次男駿希さん(21)、三男京弥さん(19)、長女美緒寧さん(15)、妻の弟夫婦の上野淳一さん(52)、優子さん(51)、その息子の琢磨君(8)の計10人で過ごしていたとみられる。
妻の両親と駿希さんの死亡は6日までに確認された。
7日は、由比ケ丘地区で早朝から捜索活動が再開された。土砂をかき出す隊員の手が止まったのは午前11時45分ごろ。寺本さんが身元確認のために呼ばれ、ブルーシートで覆われた現場に入った。
15分後、寺本さんは嗚咽交じりに声を絞り出した。見つかったのは京弥さんと美緒寧さん、淳一さん夫婦と琢磨君の5人だった。
京弥さんは今年3月に20歳を迎えるはずだった。寺本さんは「成人式を楽しみにしていた。衣装もそろえたのに残念でならない」と悔しさをあらわに。遺体はいずれも土砂に押され、顔が圧迫された状態だったとし「娘は脱臼して反対側に手が向いていた。あっという間で怖かったやろうな」と涙ながらに語った。
午後7時前には弘美さんと琉聖さんの遺体が見つかり、地震当時、家の中にいたとみられる10人は全員確認された。
元日仕事のため金沢に残った寺本さん。「俺も一緒に穴水に来て死ねばよかったんかな。それならみんなと一緒におれたのにな」と声を出すのがやっとだった。
それでも、スマホを取り出し、昨年8月に東京ディズニーリゾートで撮影した家族一緒の写真、妻弘美さんと最後にやりとりしたラインの画面をじっと見詰めると「あいつらのために命ある限り生きていく」と絞り出した。