奈良のシカ殺処分・駆除のエリア拡大へ「天然記念物」として手厚く保護も農業被害拡大受けて
奈良県で農業被害を引き起こしたシカを生きたまま捕獲し、「特別柵」と呼ばれる施設に収容する問題で、25日、県の検討委員会は、今まで駆除ができなかった緩衝地区のシカを、駆除の対象とする方向で今後検討していく方針を示しました。
奈良の鹿は、国の天然記念物として手厚く保護されていて、捕獲して殺処分するハードルが高いとされています。
奈良公園や春日大社、東大寺などがある奈良市の中心部から、東に5キロ以上離れた地域までの一帯では、シカの殺処分は一切禁止されています。
さらに、中心部から10キロ以上離れた京都府との県境などを含むエリアでは殺処分は認められていますが、年間180頭までに制限されています。
今回、駆除の対象区域として検討されている「緩衝地区」(C地区)は、シカの生息地域とそうでない地域の中間に当たり、このエリアでも現在はシカの殺処分が禁止されていて、捕獲したシカは「特別柵」で生涯にわたり収容されることになっていました。
25日、県の検討委員会は、緩衝地区での農業被害が常態化し「特別柵」へのシカの収容が今後も増加することが懸念されるとして、緩衝地区に関しても駆除の対象とする方向で今後検討することを示しました。
さらに、現在行われている「特別柵」での収容・終生飼育に関して、今後は捕獲した場所ごとで補殺または収容など管理に変化をつけることを検討するとしました。
国の天然記念物である「奈良のシカ」をめぐっては、奈良の鹿愛護会が運営する保護施設のうち、農作物へ被害を与えたシカを死ぬまで収容する「特別柵」で、昨年度、65頭のシカが相次いで死んでいて、施設で働く獣医師が「虐待の疑いがある」と告発していました。
これに対し、施設を運営する愛護会は、虐待を否定。奈良市は去年11月に調査結果を公表し、「動物虐待を裏付ける所見は見受けられなかった」と結論づける一方で、エサと糞が混じったり、水が汚れていたりするなど衛生環境に課題があり、衰弱死するシカが多いなどとして、改善を求める行政指導を行いました。
ただ、農作物への被害を引き起こしても原則、殺処分ができず、特別柵に収容するシカが農業被害の深刻化とともに増えているという課題もあり、奈良県などは、「特別柵」のあり方について、見直す方針を示していました。