盗難バイク「カワサキZ2」発見者に懸賞金300万円「生涯かけて捕まえたい」 SNSの呼びかけに反応相次ぐ
「バイクが盗まれました。どんな情報でも構いません」「皆様のお力添えをお貸し下さい…」というXのポスト。バイク盗難とその情報提供、捜索を求めるものだ。
盗まれたバイクはKAWASAKI 750RS、通称「Z2(ゼッツー)」、いまから50年以上前の1973年に発売された往年の名車だ。
さらに盗難車の発見には「懸賞金300万円」がかけられていた。なぜ懸賞金までかけて呼びかけているのか。バイクの持ち主であるタックルームさんを取材した。
バイクが盗まれたのは2025年1月15日。その現場に案内してもらうと、盗難場所はゲートもついているマンション駐車場内で、タックルームさんは「住人じゃないとここのゲートは開かない」「この裏には警備員さんが24時間いる。あちらにもカメラがあって突然来られても入れない」と、不審車両などは入れないセキュリティーとなっていることを説明。
盗まれたバイクがあった場所には、直径2センチにはなろうかというチェーンが。
「これが7〜8万円の、当時『切られない』というやつ(盗難防止チェーン)。当時一番上のやつだった」と説明。しかしそのチェーンは見事に切断されていた。
タックルームさんはこのスペースに、盗まれたZ2ともう一台別のバイクを停めており、それぞれ駐車場の鉄パイプに「地球ロック」していた。
それだけではなく2台の前輪同士を防犯チェーンで連結。さらに2台ともハンドルロック、ブレーキロックと、1台につき4つの鍵をかけており、外す手間がかかるバイクカバーもしていたが「それでもいとも簡単にやられてしまった」と悔しさをにじませた。
2台のうち1980年式のYAMAHA RZ250は被害を免れたが、Z2は盗まれてしまった。なぜ300万円の懸賞金を出してまでしてSNSで呼びかけたのか。
実は盗まれたとされる日に、駐車場を出入りする怪しい人物が防犯カメラにとらえられていた。
タックルームさんによれば、被害届を出し警察も現場検証に来たが、防犯カメラの映像も早回しで確認しただけで詳しく調べず帰っていってしまった。それでやむなくSNSでの公開につながったという。
懸賞金300万円には特別な思いがあった。小学校時代からいつかZ2に乗るのが夢だったタックルームさん。
『サラリーマン金太郎』『GTO』などの漫画の主人公の愛車としても登場し、Z2は全国の“やんちゃ少年”たちの憧れの的だったという。
必死に働きお金をせっせと貯め、ようやくその夢が叶ったのは、いまからおよそ10年前の30代になってから。発売当時は40万円ほどだった車両も購入したときはプレミアがつき、300万円近くに。
「ポンコツだったが走れるようにしてから『もっともっと』となってくると、今度はサーキット場目指してバラバラにして、完成して1年も経たずしてまた作り直した。今度はこっちをやってって」と回顧。
購入から10年。コツコツとカスタムを重ねて自分の望むスタイルに出来上がったのが1年前で、気が付けば注ぎ込んだお金は総額が約1800万円。まさに一生モノの宝物、自分が生きた証でもあった。
タックルームさんは「生涯をかけて犯人を捕まえたい」と決意を口にする。300万円という懸賞金は「警察に頼らずとも自分で探してやる」という覚悟の表れだった。
このSNSの呼びかけにすぐ反応したのは、バイクを失った悲しみと痛みを最も理解する、バイクを愛する仲間たちだった。
バイカーたちからは「仕事がら、東京・神奈川走ってますので注意しながら観察します」「浦安周辺警戒します」「最大限拡散させていただきます」「見つかったらお金なんかいりません」といった声が寄せられた。
そんなタックルームさんだったが「本当に思いを引き継げる人に(いずれ)譲りたかった。次の世代、次の世代と。なのでなんとも、苦しい状態ですね…」と、胸中を吐露する場面もあった。