75歳以上のATM利用、上限30万円に…特殊詐欺対策で警察庁検討
特殊詐欺被害の急増を受け、警察庁が、75歳以上によるATM(現金自動預け払い機)の1日あたりの利用限度額について、引き出し、振り込みとも30万円に制限する方向で検討していることがわかった。
犯罪収益移転防止法の関連規則の改正に向け、全国銀行協会などと調整を進めている。
ATMの利用限度額は現在、各金融機関の自主的な取り組みとして、「引き出しは1日50万円」「振り込み・振り替えは1日100万円」などと決められている。制度で一律に制限すれば初めてとなる。
特殊詐欺事件では、犯罪組織が高齢者らを電話でATMに誘導し、指定口座に振り込ませる手口が長年続いている。被害は年々深刻化しており、昨年の特殊詐欺被害は前年比1・6倍の約721億円(暫定値)に上り、過去最悪となった。
特に高齢者が狙われており、昨年は被害者2万951人(法人を除く)のうち、約45%に当たる9415人が「75歳以上」だった。
政府は特殊詐欺被害の急増を受け、昨年6月の犯罪対策閣僚会議で、高齢者のATMの利用制限や、金融機関による口座のモニタリング強化を推進する方針を明らかにしていた。
ただ、支店の統廃合を進める金融機関側からは、窓口業務の負担増を懸念する声もある。利用者にとっては、利便性の低下につながりかねない。このため、警察庁は、年金支給額などを考慮して制限額を1日30万円とした。出入金が多い個人事業主らについては、例外的に制限の対象外とすることも検討している。
今後、同法施行規則などに、利用制限の内容を盛り込み、意見募集を経て改正したい考えだ。警察幹部は「利用者の利便性に配慮し、金融機関側の負担も抑えられるよう、引き続き協議していく」としている。
一方、大阪府議会では24日、過去3年間にATMで振り込んだことがない70歳以上は、振り込み限度額を1日10万円以下にすることを義務化する条例改正案が可決・成立した。府内で高齢者が携帯電話で通話しながらATMを操作することも禁じ、事業者に必要な措置を義務付ける。通話禁止の義務化は全国で初めて。