精神科医療、オンライン診療拡充を 厚労省検討会で議論
精神科医療の19施設で情報通信機器を活用したオンライン診療を実施したところ、対面で診療した患者と比べて治療効果に差がなかったとする研究成果が10日、厚生労働省の「精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会」(座長=田辺国昭東京大大学院教授)で報告された。
参考人として報告した岸本泰士郎慶應義塾大特任教授は「オンライン診療は患者のニーズが高い。患者と医療機関双方にとって活用しやすい措置を講じてほしい」と訴えた。
政府は今国会に提出した医療法改正案に、オンライン診療の手続きなどを規定。精神医療についても国会で議論になる可能性がある。
岸本教授らの研究グループは、うつ病患者ら199人をオンライン診療併用群と対面診療群に分け、半年後の診療結果を比較した。
2023年12月の成果発表によると、(1)治療中止(2)患者満足度(3)疾患の重症度――に差はなかった。
オンライン診療はスマホを利用したビデオ通話で診察するため、患者の通院時間が短く、通院費用も安かったという。
一方、同日の検討会には日本医師会の長島公之常任理事も参考人として出席。患者の安全面で不安が拭い切れないとし、「オンライン診療は一般化できない。慎重に試行するべきだ」と述べた。
厚労省は23年3月、精神医療におけるオンライン診療の指針を策定した。対面診察との組み合わせを認め、初診でのオンライン診療は認めていない。
24年度診療報酬改定では、この指針を踏まえて行うオンライン診療に報酬が新設されたが、「なかなか普及していない」(岸本教授)という。
政府はテコ入れを図る考えで、24年6月に閣議決定した規制改革実施計画では「初診・再診ともにより活用される方向で検討する。25年までに結論を出す」とした。