平均寿命延びても「健康でない期間」長期化 “認知症対策”が健康に生きるカギか 慶應研究チーム
■「健康でない」期間が長期化
厚生労働省によりますと、2023年の日本人の平均寿命は女性が87.14歳、男性が81.09歳で、世界ランクでは女性が1位、男性は5位となっています。
“世界最長寿国”として知られる日本ですが、慶應義塾大学・野村周平特任教授らの研究によりますと、2021年までの過去30年で日本は「平均寿命」が延びた一方、「病気や障害などなんらかの問題を抱えて生活する期間」は長期化していたことがわかりました。
具体的には、平均寿命は過去30年で5.8年延びていた一方で、なんの病気や障害もなく生活できる「健康寿命」はそれより短い4.4年の延び幅でした。その結果、「健康でない期間」は9.9年から11.3年に拡大していたということです。
野村教授は、「健康でない」期間が長期化している原因のひとつは、医療の進歩により、病気になった人が亡くならなくなったためだとした上で、今後は病気になった後の治療のみならず、「どう予防するか」に注力していく必要があると指摘します。
■都道府県ごとの健康格差も拡大
研究では、都道府県ごとの平均寿命の格差が拡大していることも明らかになりました。1990年には、沖縄が最も長寿な県で平均寿命が「80.6」歳だった一方、最下位は大阪で「78.2」歳で、その差は四捨五入すると「2.3歳」でした。これが2021年には“最長寿”は滋賀で「86.3」歳、最下位は青森で「83.4」歳で差は「2.9」歳と、1990年のときよりも地域差が拡大した結果となりました。
健康の地域格差の背景としては、病院などの医療レベルの差はもちろん、高齢化の具合や地域特有の食生活など様々な要素があげられるということです。
■“認知症”への取り組みが今後のカギ
また、野村教授は、日本の健康課題を解決していく上で「認知症」への取り組みが今後重要になると指摘しています。
例えば、高齢者が亡くなる原因のひとつ、「誤嚥性肺炎」はもとをたどれば認知症などがきっかけで引き起こされているということです。国際基準に照らした主要死因のランキングでは、日本の1990年の主な死因1位は「脳卒中」だった一方、2021年には「アルツハイマー病を含む認知症」が1位になりました。
野村教授は、「脳卒中やがんなどは手術や予防の研究も進んで死亡率が軒並み下がった一方で、認知症については根本的な治療方法がまだなく、予防方法も数が多いわけでなく、相対的にランクが上がってきた」と指摘します。また、認知症は介護問題などにも直結する病気であり「今後健康課題を解決するうえでハイライトされるべき課題だ」としています。