“紀州のドン・ファン”と呼ばれた資産家の男性が殺害された事件の第7回公判が1日、和歌山地裁で行われ、覚醒剤を被告である元妻に販売したとされる人物が証人として出廷し「被告に売ったのは4〜5グラム、販売金額は10〜12万円だった」と証言しました。

“紀州のドン・ファン”と呼ばれた和歌山県田辺市の野崎幸助さん（当時77歳）は、2018年5月、急性覚醒剤中毒で死亡しました。
元妻の須藤早貴被告（28）は野崎さんに殺意をもって、何らかの方法で致死量の覚醒剤を摂取させ殺害したなどとして、殺人などの罪に問われています。

9月12日の初公判で須藤被告は「殺していません」と無罪を主張した一方、検察は「完全犯罪」などの検索履歴があったなどとして「遺産目当てで結婚し殺害した」と指摘しています。

■覚醒剤の売人が証言「暗い路地で売買」「4〜5グラム、販売金額は10〜12万円」
1日の裁判員裁判では、法廷内がパーティションで区切られた状態で、「覚醒剤の売人」が証人として出廷しました。
売人とされる人物は仲間とともにインターネットの掲示板で覚醒剤を販売し、配達を担当していたということです。
証人は2018年4月8日の午前0時ごろ、「暗い路地で（被告と）売買した」「4〜5グラム、販売金額は10〜12万円だった」と語り、須藤被告は「『旦那には知られないようにしている』と話していた。（被告は）薬物をやっているようには見えなかった。行動もおかしくなかった」と話しました。

■須藤被告の姉と母「事件後に記者から結婚を聞いた」被告は「殺していない」
1日の裁判では、須藤被告の母と姉に対する警察の取り調べ調書とLINEのやりとりが証拠として提出されました。
2人の供述調書によると、母も姉も、須藤被告が野崎さんと結婚したことを、事件後に記者から聞いて初めて知ったということです。

姉が「誰かと付き合っているの？」とLINEのメッセージで尋ねると、須藤被告から結婚したことを告げられ、結婚の理由について「お金をくれるから」「死ねば遺産が入るから」と答えたということです。
警察による強制捜査が行われた後も、須藤被告は姉に対し「自殺か事故じゃないかな」「自然死で遺産が入る予定だった」などとメッセージを送り、母に対しては「覚醒剤もやっていないし、殺してもいない」と犯行を否定していたということです。

裁判は今後も証人尋問が続き、判決は12月に言い渡される予定です。