「亡くなる人が書く内容とは思えない」 拘置所内で死亡した「トー横のハウル」、彼女に宛てた“直筆の手紙” 残る死因不明の疑問
「トー横」と呼ばれる新宿歌舞伎町・新宿東宝ビル横のエリアには、日々行き場のない少年少女らが集まっている。そんな少年少女らにボランティアで炊き出しなどを行う、「歌舞伎町卍会」の総会長を務めていたトー横の「ハウル」こと小川雅朝被告(33)が、東京拘置所で死亡した。
小川被告は今年6月、「トー横」で知り合った16歳の少女にみだらな行為をしたとして、逮捕・起訴。
それから約5カ月半後の11月14日、初公判を前に、東京拘置所の部屋で体調が急変して死亡した。警察が司法解剖したが、死因は不明だという。
小川被告は、なぜ死に至ったのか。遺志を引き継ぎボランティア活動を続ける「歌舞伎町卍会」元幹部の男性は、弁護士から、8月ごろの時点で「まともに受け答えができる状態ではなかった」と聞いていた。
逮捕直後は「トー横」へ戻る意思が強かったが、起訴されて「帰ってくる場所はない」などと言われるうちに、次第に元気が無くなっていったと語る。
元東京拘置所刑務官の坂本敏夫氏は「おそらく独房に入ってるため、殺人とか傷害致死などの恐れはないだろう」とみている。
坂本氏によると、受刑者の身柄を確保するため、刑務官は15分に1回、必ず巡回するように指導されているという。
小川被告と逮捕時も交際していた女性、Yさん(21)は、弁護士を通じて、伝言をやりとりしていた。
しかし弁護士は当時、しゃべっている内容がモゴモゴしていて聞き取れない、などとYさんに伝えている。原因は、処方されている薬のせいか、ストレスなのか、わからなかったそうだ。
Yさんは「ボランティア活動するよりも、自分のことからちゃんとしてほしい」との思いで、小川被告へ手紙を送り始めた。
いつも弁護士からの「罪を認めて反省する」という言葉のみだったが、10月の終わりに本人直筆の手紙が届いた。
「東京拘置所に移動になった、移動だ! 残りまだ裁判の結果でてないけど、もう会えると思う!! やっと会える。出た後どうしようかな。一緒に行くよな! マンスリーマンション……高田馬場に訳ありでも貸してくれるとこあるらしい! ちょっと調べてみてほしい! ここまでずっとはげましてくれたYが好きだわ。なんか車でどこかに行こう! まずそうしよう! とりあえず東京拘置所に来たって事は、もう調べることがないってこと! あとは裁判して終わり!! 愛してる」(直筆の手紙より)
Yさんは「亡くなる人がこんな前向きなメッセージを書くとは思えない」として、一緒に過ごした日々を振り返りながら、小川被告への感謝を語った。
刑事司法の問題に取り組むNPO法人CrimeInfo代表で、弁護士の田鎖麻衣子氏に話を聞いた。
刑事制度は伝統的に密行主義だったが、約20年前に名古屋刑務所で受刑者の死傷があったことから、刑事施設(刑務所や拘置所)での死亡事案を公表するようになった。しかし、第一報を発表した後については、まだ課題が多いという。
「刑事施設を管理する側が、施設運営で一番大切にしているのは、逃走や暴動、自殺といった事故を防ぐこと。具体的な情報を明らかにすることで、『内部の規律秩序が揺らぐのではないか』、『それがきっかけで警備上・保安上の問題が起き、さらなる事故につながるのではないか』といった強い警戒心がある。(被収容者のプライバシーもあり、)法律上もなかなか情報が開示されない。つい最近まで、被収容者本人の医療情報も、開示されなかった」