「耐震シェルター」工事急増 能登半島地震 家屋倒壊の圧死受け注目
能登半島地震で家屋の倒壊によって多くの圧死者が出たことから、戸建ての一部屋を耐震補強する「耐震シェルター」の注目度が急上昇している。神奈川県大和市のミホ工業によると、年間2〜3件だった依頼が、今年は5月までで55件に急増している。
部屋の内壁を取り壊し、鉄骨を組み入れて強化するもので、家屋が倒壊してもシェルターは壊れない。一部屋だけの工事ということもあって「6畳180万円から」と比較的安価な点も魅力。補助金が出る自治体も多い。
能登半島地震で亡くなった約300人のうち、8割は家屋の倒壊が原因で、その中の4割が圧死。耐震に不安を抱える木造住宅に住む人が、大きな危機感を持つきっかけとなった。元日の発生で“天災は来るときを選ばない”という認識も改めて広まった。ミホ工業の宮崎保社長(54)が「最も無防備となる睡眠時の被害を防ぐために、寝室への施工を推進しています」と語る。
実際に、寝室に施工した人からは「寝ているときに地震が来ても安心だと思えるようになった」と安堵(あんど)の声が上がっているという。
耐震シェルターのメリットはこれだけでなく、猛暑対策にも絶大な効果がある。補強工事では、壁も頑丈な素材を使うため「断熱性が高くなり、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせる」(宮崎社長)という。空調機器を効率よく使えるため、高騰する電気料金も抑えることができる。
今年は既に静岡市で40度を超えたが、夏の暑さは年々厳しくなるばかりというのが実感だ。耐震シェルターは大地震だけでなく、酷暑対策にも役立ちそうだ。(菊地 一)