「帰れる実家がない」「友達が帰省でいなくなるのが嫌」…家族との不和や介護疲れ、若者向け宿泊施設の今
孤独や不安を抱える若者に休める場を提供しようと、京都市ユースサービス協会(中京区)が無料の短期宿泊施設「おりおりのいえ」の運営に取り組んでいる。
開設から1年たち、家族との不和や介護疲れ、不慣れな1人暮らしなど多様な悩みを抱えた18歳前後の利用が後を絶たない。
「安心して過ごせるもう一つの家」を必要とする若者の現状に理解と支援を呼びかけている。
協会は市内にある青少年活動センターの運営に携わる。午後9時のセンター閉館後も家庭の事情などで「帰りたくない」という若者の声があり、夜の居場所づくりが課題だったという。
施設は篤志家の寄付を得て市内の一軒家を借り、昨年10月に開設した。個室2部屋やリビングなどがある。週2回は日中も休憩や勉強、談話できる場として開放している。
9月末までの利用者は延べ320人(日中含む)。宿泊は計52泊あり、中学生から20歳前後の女性の利用が多いという。
利用する理由は、幼いきょうだいの世話や家族の介護に疲れて休憩に訪れたり、生活費が底を突いたりとさまざま。養護施設など社会的養護を経験して18歳で自立したものの、1人暮らしに疲れたり、寂しさを感じる人の利用も少なくないという。
心の病気があって一人で朝起きるのがつらいため、通院日の前日に泊まってスタッフの助けを借りる人もいれば、義理の親との不和で居場所がなく距離を取るために泊まる人も。3連泊までなら何回でも無料で泊まれるようにした。
同協会は、保護者の病気などで児童を短期間預かる施設はあるものの、中学生以上を受け入れる施設はほとんどないと指摘する。
未成年者の宿泊には保護者の同意を求めるが「親のためのレスパイト(休息)ではなく、若者自身が利用を決められるのも大きな違い」という。
協会の担当者、竹田明子さん(43)はこの1年を振り返り「帰れる実家のない子も多く、友達が帰省でいなくなるお盆を『嫌い』という子も少なくない。利用した彼女たちが『実家みたいな場所』と言ってくれ、やってよかったと実感している」と強調。
「孤立しながらも頑張っている若者が身近にいっぱいいることを知ってほしい」と話す。