「歯ブラシで刺した」の看護記録、「徘徊中ぶつけたようで血だらけ」と書き換え…みちのく記念病院殺人隠蔽事件
みちのく記念病院(青森県八戸市)の患者間殺人 隠蔽いんぺい 事件で、顔を刺されるなどして殺害された男性(当時73歳)の看護記録に「徘徊中にけがをした」と、事実と違う記載があることが、病院の内部資料でわかった。
看護師の一人は取材に対し、もとの記録には危害を加えられたことを示唆する記述があったと証言。「(同僚に)頼まれた」と話し、自身が書き換えたことを明かした。
県警もこれらを把握しており、内容が改ざんされたとみて経緯を調べている。
殺人事件は2023年3月12日深夜に発生。男性は、相部屋の男(59)(殺人罪で懲役17年が確定)に歯ブラシの柄で顔面を何度も突き刺された。
同日午後11時45分に血だらけの状態で見つかり、手当てを受けたが翌13日午前10時10分、死亡が確認された。遺族によると、病院は当初、「転んだ」と説明していた。
読売新聞が入手した男性の看護記録には、発見時の「12日23時45分」の内容として、「物音にて訪室。徘徊中顔面をぶつけたようで数ヵ所の打撲・外傷あり、血だらけ」と記載されていた。
しかし、殺人事件の確定判決によると、男性は両手をひもでベッドに固定されていて、徘徊できる状態ではなかった。
看護記録には「13日14時16分」と、書き換えたとみられる時刻も残っている。
取材に応じた看護師は、「徘徊する人だと聞いていたからそういう内容にした」と書き換えを認め、「もとの記録には(加害者が話した)『歯ブラシ』『殺そうと思った』という言葉があった」と証言した。その記録は県警も確認している。
この看護師は、男性が手当てを受けていたフロアを訪れた際、「(同僚から)『こんな記録が残っていると院長が困る。変えてください』と頼まれた」とも話した。病院では、看護記録などの入力に必要な個人のIDとパスワードが書かれた書類が執務スペースに置かれており、看護師は、最初に記録を残した同僚のIDなどを使って書き換えたという。
読売新聞は、男性を殺害した男の事件直後の看護記録も入手。「12日23時50分」時点の内容として、「やったのは、おれだ」「歯ブラシで、何度も刺した」などと、男の発言があった。
県警は、うその死因が書かれた死亡診断書を殺人事件の遺族に交付するなどしたとして、当時の院長だった石山隆容疑者(61)と、その弟で被害者と加害者の主治医だった石山哲容疑者(60)を犯人隠避容疑で逮捕している。
看護師は県警に対し、死亡診断書の作成が隆容疑者の指示だったと説明しており、捜査関係者は、殺人事件を隠蔽しようという意向をくんで、看護記録の改ざんが行われたとみている。