「酒鬼薔薇聖斗」から途絶えた手紙…「償いと謝罪」を求め続ける遺族の思い
日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’22』(毎週日曜24:55〜)では、神戸連続殺傷事件で娘を失くした父親を追った『生きる力 ―神戸連続殺傷25年 途絶えた手紙―』(読売テレビ制作)を、22日に放送する。
1997年、神戸市須磨区で起きた児童連続殺傷事件。3月に山下彩花ちゃん(当時10)がハンマーで頭を殴られ死亡。2カ月後の5月、土師淳君(当時11)が頭部を切断され中学校の正門に置かれた。
加害者Aは当時14歳。自らを「酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)」と名乗り、殺人は「人間の壊れやすさを確かめる聖なる実験だった」と語った。
神戸家庭裁判所は、性的な未熟さがサディズムにつながったとして医療少年院送致を決定。仮退院を経て、2005年1月に社会復帰した。
ある「身元引受人」のもとで、1年余の生活を送り、独り立ちを果たしたA。年に1度、遺族に手紙を送り、自らの近況や胸の内を伝えていた。
彩花ちゃんを亡くした父・山下賢治さん(73)。毎年11月、娘の誕生日には大好物だったカレーライスを作る。山下家の仏間に今も飾られている書初め「生きる力」。彩花ちゃんが事件の2カ月前に書いたものだ。この言葉を支えに、少年野球の指導者を続け、地域の子供を見守ってきた。
5年前、支えあって生きてきた妻の京子さんを病気で亡くし、「生きる力」を失いかけたが、事件後に生まれた多くの人との「出会い」が、新たな力を届けてくれた。
京子さんの手記に感銘を受け、命の教育を続けてきた長野県の教師。「本に出合わなければ自分も加害者になっていたかもしれない」と話す神奈川県の女性――皆、本との出会い感謝し、事件現場の近くに植えられた「桜」の木に感謝の思いを伝えに来る。賢治さんは「出会いはすべて彩花がもたらしてくれたものだ」と話す。
賢治さんは、妻亡き後、1つの決意をした。加害者に「償いと謝罪」を求め続けることだ。
毎年命日に届いていた加害者Aからの手紙は、2018年以降、届かなくなり、消息も分からない。しかし、自ら犯した罪から逃げることはできない、手紙を書き続けるべきだと考えている。
根底にあるのは子供が子供を傷つけるという悲劇が、二度と起きないでほしいという願いだ。
神戸児童連続殺傷事件から25年。「償い」と「生きる力」について伝えていく。