ゼレンスキー大統領、専用列車内で単独会見…「復興に日本の指導力必要」
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は23日、読売新聞の単独インタビューに応じ、ロシアによるウクライナ侵略からの復興に向け、先進7か国(G7)議長国でもある「日本の指導力が必要だ」と述べた。民生支援や経済協力に期待感を示した。早期の和平交渉再開を提案している中国に対しては、提案を受け取っていないと指摘し、ウクライナ側の「10項目の和平案」への協力と首脳会談を要請していることを明らかにした。
インタビューは、ゼレンスキー氏がウクライナ南部の主要都市ヘルソンを視察後、首都キーウに戻る専用列車内で約1時間行われた。
ゼレンスキー氏はこの中で、「日本は最初に対露制裁を科した国の一つだ」と称賛し、「冬の間、日本が(自家発電機など)エネルギー支援をしてくれたことに感謝する」と述べた。
21日にキーウで岸田首相と会談した際、より長期的な復興を念頭に、医療や、環境に配慮したエネルギー分野などでの協力拡大が必要だとし、自動車産業やリチウムなどの鉱物生産の分野での日本企業の進出も促したという。
ゼレンスキー氏はまた、ロシアが原子力発電所を占拠している現状に強い危機感を示し、「原子力防護に関する日本の知識が必要だ」と強調した。
ロシアのプーチン大統領との対話の可能性については、和平交渉を行う「条件が全く整っていない。まずロシアが領土から出ていかなければならない」とし、プーチン氏による停戦は「信用できない」と語った。
21日にプーチン氏が中国の習近平(シージンピン)国家主席とモスクワで会談したことについて「ロシアはまだ完全に孤立したわけではないと見せたかったのだろう」と指摘した。
ロシアとウクライナ双方に和平交渉を呼びかける中国の「12項目の提案」に対しては、「主権と領土の一体性の尊重が先だ」と述べ、懐疑的な見方を示した。「中国から仲裁の提案や会談の要請は受けていない」とも述べ、ウクライナの和平案への協力や首脳会談を希望すると「外交ルートで明確に伝えた」と表明した。
ウクライナは米欧に対し、戦闘機の供与を要請している。米欧には、戦闘のエスカレートを招きかねないとの懸念があるが、ゼレンスキー氏は「防空網の一部(として使うの)であり、ロシア領(の攻撃)では使う必要はない」と明言した。
バフムトなど東部の最前線では、「状況は良くない。弾薬がないためだ」とし、欧米に弾薬や戦車提供を加速するよう訴えた。
一方、ウクライナ侵略を巡り、「我々だけの問題ではない。(ウクライナへの)支援は自国の独立と安全につながることを理解してほしい」と述べ、法の支配や民主主義など共通の価値観を持つ自由主義諸国の結束を求めた。