葬法?事故?藤原宮跡、飛鳥の人骨に犬のかみ痕
奈良県橿原市の藤原宮(694〜710年)跡で1977年に出土した飛鳥時代の子供の大腿骨に、犬がかんだとみられる痕がついていることが、奈良文化財研究所(奈良市)の調査でわかった。
研究者は「犬が、あたりに放置されていた子供の遺体からくわえやすい大きさの骨を運ぶうち、近くの運河に落として埋まったのではないか」とみている。
骨は左脚の一部で長さ約23センチ。大きさから5〜12歳の子供と推定され、かんだ痕跡のくぼみが2か所あった。
藤原宮の造営時に資材を運び入れた運河跡で見つかり、同研究所が昨年、再調査を行って人骨と確認した。
水分の多い土壌に埋まって酸素と遮断され、微生物に分解されずに残っていたらしい。
万葉集には歌人の柿本人麻呂が、藤原宮近くの天香久山で遺体を見て詠んだ歌が残っており、都の周辺に遺体が放置されていたことがわかっている。
同研究所の山崎健研究員は「当時の葬り方の一端をうかがわせる発見」としている。
一方、和田萃(あつむ)・京都教育大名誉教授(日本古代史)は「日本書紀などに記されたように、飛鳥時代は土葬が一般的だったはず。事故や事件に巻き込まれ、亡くなった子供の骨かもしれない」と話している。
調査成果は、同研究所が1日発表した紀要に掲載している。